オリエンティア・テクノロジーズ株式会社

Beyond Smartphone

2007年にNHK教育テレビで放送された「電脳コイル」というアニメ作品の中で、現実世界に「電脳世界」を重ね合わせて見ることができる「電脳メガネ」と呼ばれるスマートグラスが描かれていて、やはりスマホの次はAR(Augmented Reality、拡張現実)デバイスが来るはずだと開発されるのを待ち望んでいるのですが、スマートグラスの話題は、たまに浮上するものの、まだ一般に普及するようなものは実現できていないようです。

その一方で、自分が生きているうちには実現されるはずがないと思っていた、人間と対話できる人工知能が、AI研究者自身も驚く長足の進化を経て、一般の人にも利用できる形で公開されるというショッキングな事件が起こり、まさに、世の中は技術のブレークスルーで変わるということを目の当たりにしています。

自然言語処理の衝撃

人工知能コンピュータというと、私の世代では「第五世代コンピュータ」プロジェクトを思い出してしまいますが、1980年代当時、このプロジェクトが打ち出した「推論マシン」という考え方では、論理プログラミングによって人間が行うような推論をコンピュータで実現できると考えていました。

コンピューターは、そもそも論理を扱うのは得意なはずですから、上記のような考え方はごく自然なものだと思います。ましてや、人間が使う自然言語なんて曖昧なものは、なるべく排除すべきとさえいえるかもしれません。

ところが、現在、話題になっているGPT-4というAIモデルは、大規模言語モデル(LLM: Large Language Models)という自然言語処理(NLP: Natural Language Processing)モデルなのです。

大規模言語モデルは、大量の自然言語テキストをトレーニングデータとして用いて学習された機械学習モデルですが、その基本的な原理は、学習した単語の出現パターンをもとに、与えられた文章から新たな文章を作成するというものだそうです。もちろん、他にさまざまな工夫が加えられているはずですが、自然言語から概念やロジックを抽出して、厳格な論理処理を別途行っているわけではないそうです。

大規模言語モデルから得られた知見は、人間の意識に対する私たちの素朴なイメージを大きく覆すものといえるでしょう。

私たちの意識では、経験や学習によって獲得した様々な概念が形成されており、それらを論理的に処理して新たな知見を生み出していると思っています。だから、自分が考えていることを、他人にテレパシーのようなもので伝えられるとしたら、言葉を使って伝えるのではなく、考えていることがそのままの形で相手の頭の中に移動できるような気がするのですが、大規模言語モデルの知見をもとにすると、言語の中ににこそ知性が存在するのであって、むしろ言語抜きには存在できないのではないかとさえ思えてきます。

私たちの目指すもの

GPT-4の出現によって、今後、AIはWeb検索やメール処理のみならず、すべての知的作業に影響を及ぼすことになるのは間違いないでしょう。

今後日本が迎える人口減少社会の発展には、社会の生産性をこれまで以上に上げることが求められています。テクノロジーの活用は、いつの時代にも社会の生産性をあげるための重要な鍵です。

私たちは、常に人類のテクノロジーの進歩に関心を持ち、それらの活用を通して、社会に貢献し続けていきたいと願っています。私たちが目指すものは、不断の技術のブレークスルーへの追求と、その製品化によって多くの人が利用可能になり、それによってもたらされる新しい世界です。